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ジョン・テニエル挿絵のチェシャ猫…と、ルイス・キャロル自筆挿絵のアリス
マクミラン社刊「不思議の国のアリス」(1865) に付けられた、週刊風刺漫画誌「パンチ」のイラストレーターとして著名だったジョン・テニエル (1820-1914) の有名な挿絵。

キャロルが作品を捧げ、自筆挿絵でもモチーフにしたアリス・リデルとは違い、彼は金髪らしきお嬢ちゃんを描いています。
作中、髪の色やスタイルについての言及はありません。キャロル挿絵のイメージ (顔立ちはアリス・リデル似、髪の色は黒のようだが、ヘアスタイルはボブではなく真ん中分けのロングヘアー) が全て。
それがこういう形になったのは、「アリスは額を出すべきか否か」といった、キャロルとテニエルの話し合いの結果でした。
挿絵のキャラ設定は、昔も今も売れ行きに影響する、重要事項なんですね。
それまであまりモデルを使わずに作画していたテニエルは、「そういうアリスのイメージなら、私が選んだこの子を使って描いてほしい」というキャロルの熱い ? 希望に譲歩し、メアリー・ヒルトン・バドコックという少女を写生して絵を仕上げたといいます。
結果は…大ヒット !

※メアリー・ヒルトン・バドコック ( ? - ? )。

1865年、キャロルがテニエルに彼女の写真を送ったのは事実ですが、モデル説については疑問視する声もあるそうです。
(4月27日記)
http://www.hp-alice.com/lcj/zatugaku/debut.html

最初の本の書影が欲しかったのですが、見つかりません。日本では聖徳大学が所蔵しているらしいですね。
もっとも、印刷が悪いということでテニエルがNGを出し、初版は全部回収 (のち、慈善団体に寄付) されたそうですから、翌1866年、正式に世に出た新版なのでしょうが (奥付は1865年になっているそうな。絵の差し替えもあるようです)。
テレビの特集で登場したコレは、復刻本か版を重ねたモノなのでしょう。

1998年にオークションで初版本が150万ドルで競り落とされ、それまでに落札された中で最も高価な児童文学書となりました(初版本は、22冊の所在が知られており、うち17冊は図書館に収められ、残り5冊は個人蔵とか)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AE%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9
この方は1878年版をお持ちなんですね ! 凄げぇ。すいませんが、写真お借りしました。
つれづれ http://rakujin.de-blog.jp/atelier/2007/07/post_e30c.html

わたくしが初めて「不思議の国のアリス」を読んだ1975年の角川文庫版では、和田誠がいつもの淡泊な感じで挿絵を担当していたので、初出版の際に付けられたこの挿絵を見た時は、生々しさに驚きましたね。

チェシャ猫がニヤニヤ笑いを残して消えてゆくところ。

彩色版。


ところで、今回いろいろ調べていくうち、気が付いたこと。
ルイス・キャロルことドジソン教授の有名なご趣味…少女愛、いわゆるロリコンってやつですな…についての解釈が変わってきているんですね。
ウィキペディアによると、2003年10月にフランス西部のレンヌで開かれた第2回国際ルイス・キャロル会議で、彼の少女愛については「神話である」と否定されてるんですって。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AD%E3%83%AB
こちらは大変詳しいですが。
http://www.hp-alice.com/lcj/myths/lolita.html
…でも、ホントかなぁ〜?

近所の本屋に、平成に入ってから矢川澄子 (1930-2002 亡くなっておられたとは。しかも自殺…澁澤龍彦の元妻でもある) によって訳された新潮文庫版「鏡の国のアリス」があったので、あとがきを読むと、
…「アリス」は男の子が書いた文学の典型である。姉はいたものの、11人きょうだい (女7人、男4人) の長男として生まれたキャロルは下のこどもたち、特に幼い5人の妹たちを楽しませることに情熱を燃やし (これは事実で、鉄道ごっこなんてのをしていたらしい) 、“お話”もした。それが「アリス」誕生の基盤になっている…
大意こんな書き出しで、キャロルがその延長で大人になってからも、少女たちを“楽しませようと”接し続けた、と紹介。

1975年角川文庫版「不思議の国のアリス」の訳者、福島正実があとがきで、
…奇人ぶりを強調したあと、13歳のアリス・リデルに求婚したという逸話 (手紙類が破棄され、具体的な証拠は現在残っていないが) を紹介。生涯独身で、女性への興味は10歳以下の少女に限られていた。内気でどもる癖があったが、少女たちの前ではその苦しみから解放された…
と書いたのに比べると、初めてキャロルの人となりを知る時に、コッチの受け止め方も変わってくるというものです。

おそらく、平成の初め…文庫「鏡の国のアリス」は1994年刊だが、単行本としては「不思議の国のアリス」とともに1990年から91年にかけ訳されている…という時期に秘密があるんでしょう。例の宮崎勤の事件 (1988〜89) などで、こーゆーご趣味に世間のバッシングが激しくなった時期でした。
キャロルを護りたいという意志が働いて、前記の紹介文が書かれたのかもしれませんね。

ネット上で見かけた「キャロルは大人の女性にも興味はあった (少女時代にキャロルと出会い、その後も良好な関係を続けていた女性たちだが)」「ヴィクトリア朝時代において児童のヌード写真は珍しくなく、彼が撮った少女ヌードも特別な趣味によるものとは言い切れない」といった、アタマのいい人たちの擁護論 ? を読んでいると、“あの”キャロルがどんどんフツーになっていくようで寂しいです。
ソッチのご趣味に対する風当たりがさらに激しい昨今、とうとうキャロル氏の少女愛は、作品を護る人たちによって完全否定されたんだろうか…などと思いました。

でもね〜、どうかなー。これって事実を歪曲してると思うよ。
下は、アリスに贈った「地下の国のアリス」肉筆本に添えられたキャロル自筆の挿絵。“わたしを飲んで”と書かれた瓶の液体を飲んだせいで巨大化し横たわる難しいポーズ、ここ一番の大きい 決めゴマ 状態な1枚。写真 (ポーズはアリス・リデルのものではないかもしれない) からトレス、苦心して描かれたように思える。

改めて見ると、アリスの左手の感じが、なんだかエロいぞ…キャロル、この絵の狙いはやっぱソコかよ (笑) ?

巻末に貼られた、アリスの写真。おそらく、キャロルがイチバン好きだった7歳ごろのアリス・リデルでしょう。

これが元写真。確かにカワイイですな。

今日、これをアップする前に調べていて、巻末の写真がイラストバージョンのものがあるのに気が付きました。
http://www.alice-in-wonderland.net/alice2c.html
ネット上にあるのは復刻版の図版なのでしょうが、コレはどういうことなのか。アリスに贈ったものが写真版で、キャロルが手元に残した写本がイラスト版ということなのか ? どなたかご教示下さい。

※キャロルの手になる巻末アリスイラストは近年発見されたもので、2009年発行の洋書「地下の国のアリス」では写真版と同時収録されているそうです。(4月25日記)
http://www.evertype.com/books/alice-underground.html

わたくしはヘタなマンガも描くので体感しているけど、絵が本業でない男性が女の子の画を描く場合、ちょっとドキドキするものがあります。まして、絵心があるとは言えないヒトが、作中のキャラにしているとはいえ実在する女児を描いて、それに少しでもカワイク描こうとする意志の働きが見て取れ、本人に贈ろうとまでしたなら、もう「愛」の告白に近いと思うけど。
キャロルの少女を描く線 (怒られるのを承知で書くと、ヘンリー・ダーガーっぽいです。少女たちが群れるアウトサイダーアートで知られるダーガーは生前、他人に画を見せなかったけど) にはそれが表れていると思いますよ。その上写真まで添えちゃって…。
ほかの少女友達については知らないが、アリスに限っては、キャロルは相当入れ込んでいたと思うな。女児に求婚…アリでしょう。

わたくし的には、「キャロルことドジソン教授は女児萌えでご趣味のヒトだけど、後世に残る作品を好きな少女への想いによって生みだした、凄いヒト」ってことでもイイと思うけど。
彼のご趣味が当時、犯罪に結びついたというわけでも無いですしね。
わが日本にも現在、特定の少女に向けて作品を創ったなんて言って、正々堂々とご趣味を邁進しておられる国際的アニメ作家が居るじゃないですか。あそこまで行けば、もう誰もナニも言わないでしょ。
キャロルファンも、変な護り方をせず、ありのままを受け入れた方がいい、と思いますけどね。大した作品を残した作家だし、ましてや前世紀の人なんだし。

余計なことをたくさん、ついでに書いてしまいましたが、このへんで。チェシャ猫編はもう少しだけやります !
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