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2008年のマイベストを考える [6]
3位...やっと観られたフランス映画『幸福 (しあわせ)』(1965)

その昔、中学の頃に『淀川長治ラジオ名画劇場』というラジオ番組があり、愛聴していた。単なる紹介だけの時もあるが、淀川氏一流の話芸で映画が長めに語られるのが良かった (『フリークス (怪物團)』の話など震え上がった) 。そこで語られていた映画の中で強く印象に残りながら一度も観る機会がなかったのがコレである。
それから34年目にして、NHKBS2で放送されたのを観た。そして、この映画があまりテレビに出ないわけが判った。上映時間がたった80分なのだ。自分は一度も結婚しておらんが、そーゆー人が観ても怖い、深い。ご夫婦で観たあと語り合う人もいるかしれん、ちょっと横で話に聞き耳立ててみたいと思う。

以下、キネマ旬報データベースから物語を引用させていただきつつ若干補足する。

ひまわりが揺れる夏の午後。揺らめく大気の中、幸福そうな一家がピクニックにやって来るところから物語は始まる。
木工家具職人のフランソワ (ジャン=クロード・ドルオー) は妻テレーズ (クレール・ドルオー) 、ジズー、ピエロ (サンドリーヌ・ドルオー、オリヴィエ・ドルオー) という名の可愛い二人の子供と平凡で実直な生活を送っている。

そんな彼にとって新しい事件が起ったのは、近くの町まで仕事で出かけ、電話をかけるため郵便局に立ち寄ったときたった。窓口の娘と二言三言コトバを交したが、彼はなぜか彼女に好意を感じた。二度目にあったとき、二人でお茶を飲んだ。娘はエミリー (マリー=フランス・ボワイエ) といい、彼と同じ町に転勤が決り、部屋も見つけたことを話した。
もう二人は愛を感じるようになっていた。彼女は彼に家庭があることも知っていたが二人は不自然さも罪悪感もなく、結ばれてしまった (カラダの相性も合った。妻とはまるで違うタイプである、とフランソワは言う) 。だが彼は昔と全く同じように妻も子供たちも愛しており、別れる事など考えられない。
2人も愛するヒトができるとは、自分はなんて幸福なんだとベッドで語る彼に、「2人を愛せる ?」 と言うエミリー。フランソワは「できるさ」、と自信に満ちて答える。

ある休日、例のようにフランソワ一家はピクニックに出かけた。そこで彼は妻にすべてを告白した。他に好きな人がもう1人できたが、君や家族への愛は変わらない、と。テレーズは少し考えてから「あなたが幸せなら私はそれでもいいと思うわ」そう答えた。彼は喜んだ。純粋によろこんだ。そして大人しい彼女がかつて見せたことのない大胆さで夫を求めた。快い疲労に眠った夫が子供たちの声で目を覚ましたとき妻の姿はなかった。
池に溺死体となった妻を発見して、彼は悲しんだ。まわりの人々は不幸な事故で愛妻を失なった男として同情を寄せ、とりわけエミリーが心からテレーズの死を悲しんでくれた。
日が経つにつれ、彼は昔どおりの働き者に戻った。エミリーが子供たちの面倒をみてくれ、いつの間にかそれが習慣になった。家事をする女性がエミリーに代わったというだけで、きわめて平穏な日々を送るようになっていた。子供たちもエミリーになついているようだ…。
紅葉が美しい森の奥に、妻にあたる女性が代わっただけの幸福そうな一家の姿が消えてゆく。

女流監督アニエス・ヴァルダ (脚本も彼女) の傑作であろう。いろんな賞も受けている。
資料を読んで驚いたが、ジャン=クロード・ドルオー (今も現役のフランス俳優) とクレール・ドルオーは実際の夫婦 (今も夫婦かどうかは知らないが) 。二人の子供も実子なんだって。クレールは女優ではなく、これ一本だけの出演のようだ。
フランソワが女と見ればクドくねちっこいイタリア系の男で、テレーズが夫の浮気を知って泣き叫んだり自分も男を作ったりすれば別のドラマが発生するが、そうはならない。素直で好感の持てる俳優たちが演じているのも怖さが増す要因だ。
男の身勝手を描いた映画との評もあるようだが、ちょっと違うと思う。水木しげるのマンガタイトル「幸福という名の怪物」というのを思い出した。
妻テレーズの溺死が事故なのか、自殺なのかは明確に描写されない (映画評論家・双葉十三郎は採点表で「自殺」と断じているが) 。それがまたなんとも知れん後味を残す。
1966年のキネ旬ベストテン第3位。1位が『大地のうた』、2位がやっと公開された『市民ケーン』であるから大健闘である。当時の玄人衆から高い評価をされたんだね。
わたくしたちが怪獣ブームに熱狂している頃、こんな映画もあったんだなぁ、と嘆息。
| 今週のわたくし2008 SUBCULTURE DIARY 2008 | 09:35 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
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