わが『ウルトラQ』が、奇妙な話や怪奇・SFのアンソロジー『ミステリー・ゾーン』(THE TWIRIGHT ZONE のこと。ナカグロ無しの『ミステリーゾーン』表記が正しいかも知れない。日本では当初、『未知の世界』という題で放送) や『アウター・リミッツ』(日本でも同じタイトルで放送されたが、のち『ウルトラゾーン』と改題) の影響を受けているというのは有名な話だが。
今年の初めに某所で観た、『ミステリー・ゾーン』第1シーズンの30話「敗北者 A Stop at Willoughby」(アメリカ初放送は1960.5、日本でも同年秋以降に放送か)。
『ウルトラQ』の異色作として有名な“人間蒸発”テーマの初期制作エピソードで、1966年の初放送では「話が難解」及び「ウルトラマン前夜祭」放送のため お蔵入り、67年の再放送で初めてオンエアされたという28話「あけてくれ !」の原型ではないか ?
両方のストーリーを書いてみる。
「あけてくれ !」
ある夜、ドライブに出かけた淳と由利子 (佐原健二と桜井浩子、番組の狂言廻し役) の二人は、途中の踏切で横たわる男を ひろった。
その男、沢村正吉 (柳谷寛) は意識を取りもどすと、いきなり「あけてくれ!降してくれ!」と暴れる。
ただの酔っ払いではないと感じた淳は、一の谷博士 (江川宇礼雄) に彼を診てもらうことにした。
催眠療法で、沢村から事情を聞き出してみると。
家庭や仕事で上手くいっていない沢村は、その夜 酔いつぶれ電車内で目覚めた。
定期券は あるのに車掌から「無札乗車」扱いされ困惑するが、座席にいた作家の男に「あなたが偶然に乗ってしまった この電車は、時空を突き抜け別世界へ飛んでいる。そこは、辛い現実から逃避したい あなたの望んでいるような理想郷だ」という説明をされ、車窓より様子を見て錯乱、乗降口を「あけ」降りてしまったらしい。
もう1人、沢村と同じ症状の婦人が一の谷博士のところに収容されており、沢村と婦人のうわごとを照合してみると、どうも同じ電車に乗りあわせていたことになる。
電車が時空を突き抜けて飛ぶ ?
しかも、2人は電車の中で推理SF作家・友野健二に会っているようだ。
友野の小説には「時空を超越した世界」へ落ちこむといった人間喪失の、謎めいたものが多かった。
そこで淳たちは友野を訪ねて、問題を探ろうと考えた。しかし、家政婦の話によると、友野は一年前ほどから失踪していて、どこからか原稿が家へ送られてくるだけと言うのだった。
帰り道、友野の声とともに、淳たちの車の中に彼の原稿が届く。
その原稿には、現実逃避願望のあった友野が偶然たどり着いた理想郷とも言える未知の別世界が描かれていた。
他の不思議事件と考え合わせると、電車は、この世界と理想郷を行き来するジャンプボードとして使われているらしい…。
一方、平静を取り戻した沢村は。
迎えに来た「愛する」妻子や、顔を出した職場で上司に罵倒され、電車を無理に降りてまでして戻った世界の、自分への冷たさを思い知った。
そして、今夜も空を通過する電車を見上げ絶叫する。
「連れてってくれ、俺も連れてってくれ〜っ !」
わたくしは、『ウルトラQ』ベスト作の中に必ず入れる、インパクトのある作品だ。
脚本は小山内美江子、監督は円谷一。
「敗北者」
ある会社の役員・ウィリアムス (ジェームズ・ダリー) は、日々自分の立場に悩んでいた。
部下には裏切られ、上司には追い立てられ、最愛の妻にも愛想を尽かされる始末。彼の苦しい立場を理解するものは誰もいない。
雪の夜、通勤電車で居眠りをし目覚めると、聞き慣れない駅名をコールする車掌の声。
外の風景が一変して、真冬のニューヨークのはずが初夏の見慣れない田舎町になっていた。
車内も古風な装飾に変貌し、目の前には初めて見る車掌が立っている。
ウィリアムスに「ウィロビーですよ。」と微笑む車掌。
聞いたこともない駅名だ。
車窓には、暖かな日差しの田舎町が広がっている。
住民は友好的な微笑みを浮かべ、釣り竿を持って通りすぎる少年たちは まるでトム・ソーヤーのよう。
アメリカ人にとって理想郷のような、ここは一体?19世紀後期の古き良き時代にタイムスリップしたのか ?
降りようとすると…
突然 目が覚め、ウィリアムスは真冬のニューヨークの通勤電車内に居た。
リアルすぎる夢 ?
しかし、その後も会社で辛い事があって通勤電車で居眠りをすると、同じ「夢」を見るようになった。
そして ある夜、彼はついに その駅で「降りて」しまう…。
脚本 (原作はナシ) はロッド・サーリング、監督はロバート・パリッシュ。
モチロン、小田急ロマンスカーは出てきませんけど。
そうか、ヒント・元ネタとなった作品があったんだな。